本を買った理由を書いて行くブログ

読書が好きだけど感想や書評を書くのはちょっとしんどいし続かない、と言うずぼらな性格の愛書家が、「なぜこの本を買いたくなったのか」という理由だけを淡々と綴るブログ。たまに雑記も。

【感想】『将棋の子』 大崎善生

良かったです。
途中、何度も泣きそうになりました。
ノンフィクションではありつつも、大崎さんの情緒的な表現は素晴らしいですね。

奨励会と言う、かなり特殊な将棋界独特の世界の中で、夢破れプロ棋士にはなれなかった者たちに焦点を当てた内容。
もちろん将棋ファンとして奨励会のことはよく知っていますし、そのルールも構造も理解していたつもりでしたが、こうやってリアルなストーリーとして描き出されて初めて、その厳しさと残酷さとやりきれなさを実感しました。

ちなみにご存じない方のために奨励会がどのような構造なのかものすごく簡単に説明しますと、

・6級から三段までの9段階に分かれている
・満21歳の誕生日までに初段に昇級できなければ強制退会
・満26歳の誕生日までに四段に昇級できなければ強制退会

こんな感じです。

将棋のプロ棋士というのは四段以上のことを指しますので、つまり26歳までにプロになれなかった者は、以降永遠にプロにはなれないのです。
26歳を迎える年の三段リーグで昇級条件を満たすだけの成績を残せなければ、もはやチャレンジすることさえ許されなくなるわけです。
何とも恐ろしい世界ですね。

ちなみに奨励会では最低の6級というランクでも、アマチュアで言えば四段とか五段ぐらいの腕前に当たるので、まあ地区の将棋大会では敵無し、全国大会でも上位に残るぐらいでないとそもそも奨励会に入れません。
野球で言えば、甲子園出場チームから選ばれたベストナインぐらいのレベルでようやく奨励会に入れる感じでしょうか。とんでもないですな。
そんな天才の集まりの中で更に腕を磨き、プロを目指すわけですが、そこに年齢の壁が立ちはだかるわけで。

想像もできないような天才ばかりが集まっている世界の中で、ある日突然、「君はもう天才ではないからここにいられない」と突きつけられるわけです。
それも、そこまでの人生の全てを、誇張でも何でもなくまさに全てをかけて来たところから有無を言わさず追放されると言う恐怖がどれほどのものなのか。本当に想像を絶しますね。

才能と努力の限界を突き付けられると言うことは、将棋に限らずどんな世界にもあることだとは思いますが、読んでいて本当につらかったです。
でも、だからこそ素晴らしいノンフィクションなのだと。
オススメです。

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『アルスラーン戦記 6巻』 荒川弘/田中芳樹

原作小説は僕の世代にドンピシャ…なはずなのですが、実は読んでいません。
これは僕自身も不思議で、特に当時はファンタジー小説とか大好きだったはずなのに何故未読なのか…謎です。
ただ、アニメは映画館に観に行った記憶がありますね。
先にそっちに走ってしまったせいで原作を読む機を逸したのかもしれないです。
そう言えば遊佐未森さんと谷村有美さんを聴くようになったのも劇場版アニメからだったなあ…(遠い目)

とは言え僕の世代で当時オタクだったやつらにとっては『ロードス島』と並ぶファンタジー界のビッグネーム
それを荒川さんが描くと言うのですから、そりゃ買いますよ。
そして実際面白い。
まあ、アニメから25年も経ってますんで記憶はかなり薄れていて、「こんな話だったっけ」と思いながら読んでますけど、まあ逆に新鮮に楽しめているので得かな(笑)。

 

靴跡の花

靴跡の花

 

 

ときめきをBelieve

ときめきをBelieve

 

 

【感想】『パンゲアの零兆遊戯』 上遠野浩平

★☆☆

なるほどなるほど。
まあだいたいあらすじとかで想像していた感じの雰囲気でしたね。
たぶん、雰囲気的には『ライアーゲーム』が近いんじゃないでしょうか。内容じゃなくて雰囲気ね。

パンゲア」という頭脳ゲームを中心にストーリーが進むわけですが、それを通じて、「未来予測とは何か?」と言うことを読者に語りかけているような気がします。
いかにも上遠野さんらしい作風ですね。

僕もこういう頭脳戦モノは好きなので、かなり楽しく読めたのですが、最後がちょっと…
なんか終わり方がまとまってない印象です。
「え? そこで帰っちゃって終わり? マジで?」みたいな。

僕も上遠野さんを読むのが久々だったんで迂闊にも忘れてたんですが、この人はけっこう独特な長いあとがきを書く人なんですよね。
で、そのあとがきのページ分がまだあると思って読んでいたので、その先入観が「え、終わり?」みたいな印象を助長してしまったようにも思います。

ただ、それがなかったとしてもちょっと尻切れトンボな印象は否めないかと。
ネタバレにならない程度に書くのが難しいですが、主人公はいったい何が目的だったのかとか、ヒロイン(と言うか主要女子キャラ)は結局何者でどうなったのかとか、そもそもパンゲアゲームをこんな風にして何がどうなるのとか、いろんな疑問が回収されないまま、いきなり照明が落ちるみたいな終わり方なのでモヤモヤ感が募りまくりです。

もちろんスッキリさせるだけが物語の終わり方ではないと思いますが、このスッキリしない感はちょっとつらいw
ストーリーとして面白かっただけに残念です。

2冊続けて同じような読後感の本読んじゃったなあ(苦笑)。

book-aok.hatenablog.com

 

『太陽の棘』 原田マハ

まだ『リーチ先生』を読めてもいないのに買ってしまいました。
そして文庫だし薄いしと言うこともあり、既にこっちを先に読み始めています(笑)。

まあ原田さんだしそれほど多くを語ることもないでしょう。
と言うか、『ジヴェルニーの食卓』を早く買えと。

太陽の棘 (文春文庫)

太陽の棘 (文春文庫)

 

 

【感想】『メビウス1974』 堂場瞬一

これは感想に困るなあ…

小説としては面白かったです。ぐいぐい読ませるし、途中でだれることもなかったし。
ただ、主人公に感情移入できない。イヤなやつ過ぎて。

ただ、この「イヤなやつ」の表現も難しいんですよね。
物語によく出て来るあからさまな悪人ではないんですよ。むしろ善人ぽい。
主人公が過去の過ちを償おうとすることが物語の主軸なので、そういう意味ではまったく悪者ではないわけです。

ただ、その償うための考え方とかやり方とかがいちいち自己中心的でズレている感じ。
「いや、それ償いって言ってるけどただの自己満足ですよね?」みたいな。
でも主人公はそう思っていなくて、正しいと考えて行動している。その感覚が「イヤなやつ」なんですよ。

もちろん、そういうキャラクターとして描いていることは物語としても意味があることなのですが、一登場人物ではなく、主人公が、しかも一人称で進む物語の主人公がこうだと感情移入して読むのはなかなか厳しいです。
で、僕は小説を感情移入して読んで楽しむタイプなので、それでちょっときつかったかなと。
客観的な視線から物語を追える人なら、たぶん問題なく楽しめるんだと思います。

そんなわけで、個人的にはやや星は少な目ですが、最初に書いた通り、ストーリーテリングは抜群ですし、一気読みしたくなるぐらい物語性は高いと思います。
ただ、正直最後の終わり方はちょっとな…と思いました。
物語中のいろんな要素をもう少しじっくりまとめても良かったんじゃないかなと…。
ちょっと結末部分だけがやけに短く急いだ印象だったのが残念です。

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『QED ~flumen~月夜見』 高田崇史

高田さんはですね、なかなか因縁が深くてですね(笑)。
このブログの前にも感想書いたりってことはFacebookやそれ以前はMixiなんかでやってまして。
で、もうこのQEDシリーズも長いので、それこそMixiの頃からちょいちょい感想は書いてるんですが、ずーっとだいたい「中の下」ぐらいの評価なんですよ。
星で言うと2.3ぐらいw

なのに、何故か買ってしまう
もはや自分でも理由がよく分からないんですけどね。

決して面白くないわけではないです(じゃないとさすがに買わないです)。
それなりに面白いのだけど、肌にしっくり来ない、と言う個人的なフィット感の問題で評価が高くないんですが、それにしたってじゃあなんで買い続けるんだって話で。
でももうそんな風に思い続けて10年ぐらい経っているので、これはもう解明不能かなと。
そう割り切って最近は買ってます。結局買うんですけど(笑)。

QED ~flumen~月夜見 (講談社ノベルス)

QED ~flumen~月夜見 (講談社ノベルス)