【感想】『太陽の棘』 原田マハ
★★★★☆
良かったなあ…
胸に沁みました。
原田さんの得意分野である画家の話なんですが、絵の描写はそれほど出て来ないんですよ。
それでも沖縄の画家たちが描いた絵がどれほど素晴らしいものだったかは、なぜか目に浮かぶように分かる。
僕が一番好きなのは、主人公である沖縄に派遣されたアメリカ軍の軍医が、彼らの作品を故郷にいる家族に送ったところ、父親から「家の一番良い場所に飾って毎日見ているけど飽きない素晴らしい絵だ」と言う感想が手紙で届いたところ。
もうこの一文だけで、理屈抜きに「良い絵なんだ」ということが分かります。
絵のことに詳しくなくても、理解もできなくても、そういうことは関係なく、遠く離れた親子が通じ合うだけで、それは「良い絵」だと。
絵そのものの描写を細かくするよりも、よほど伝わるものがあると言うことを、原田さんはよくご存知ですね。
個人的な好みだけで言うと、最後にもう一度時代を戻してほしかったという気がしないでもないのですが、まあこれは好みの問題です。
絵画や芸術に興味がなくても大丈夫。安心してどなたにでもオススメできます。