【感想】『メビウス1974』 堂場瞬一
★★☆☆☆
これは感想に困るなあ…
小説としては面白かったです。ぐいぐい読ませるし、途中でだれることもなかったし。
ただ、主人公に感情移入できない。イヤなやつ過ぎて。
ただ、この「イヤなやつ」の表現も難しいんですよね。
物語によく出て来るあからさまな悪人ではないんですよ。むしろ善人ぽい。
主人公が過去の過ちを償おうとすることが物語の主軸なので、そういう意味ではまったく悪者ではないわけです。
ただ、その償うための考え方とかやり方とかがいちいち自己中心的でズレている感じ。
「いや、それ償いって言ってるけどただの自己満足ですよね?」みたいな。
でも主人公はそう思っていなくて、正しいと考えて行動している。その感覚が「イヤなやつ」なんですよ。
もちろん、そういうキャラクターとして描いていることは物語としても意味があることなのですが、一登場人物ではなく、主人公が、しかも一人称で進む物語の主人公がこうだと感情移入して読むのはなかなか厳しいです。
で、僕は小説を感情移入して読んで楽しむタイプなので、それでちょっときつかったかなと。
客観的な視線から物語を追える人なら、たぶん問題なく楽しめるんだと思います。
そんなわけで、個人的にはやや星は少な目ですが、最初に書いた通り、ストーリーテリングは抜群ですし、一気読みしたくなるぐらい物語性は高いと思います。
ただ、正直最後の終わり方はちょっとな…と思いました。
物語中のいろんな要素をもう少しじっくりまとめても良かったんじゃないかなと…。
ちょっと結末部分だけがやけに短く急いだ印象だったのが残念です。