本を買った理由を書いて行くブログ

読書が好きだけど感想や書評を書くのはちょっとしんどいし続かない、と言うずぼらな性格の愛書家が、「なぜこの本を買いたくなったのか」という理由だけを淡々と綴るブログ。たまに雑記も。

【感想】『烏に単は似合わない』 阿部智里

★★★★★

まいった。これはまいりました。すごい。正直、ナメてました。
でも一応、ナメてかかったのには理由があるんですよ。

最近、年齢のせいかなかなかファンタジー系を純粋に面白いと感じられなくなって来ていまして。
まあやっぱり年を取ると自由な空想の世界に浸りきれなくなるんでしょうね…残念なことに。
どうしても気恥ずかしさのようなものが邪魔をして、「ああ、まあ子どもには良いだろうけど、小説を読みなれた大人にはねえ」みたいなアホなプライドを振りかざして、自分の空想力の低下を誤魔化すようになってしまいました。哀しいことです。

で、この作品も最初はそう思ったんですよ。

人でもあり烏でもある八咫烏の世界。4つの家が互いに争いながら覇権を握ろうとしている構図。ファンタジー系でよくありそうな感じですよね。
「やっぱりねー」と思いながら序盤を読んでいまして、一度は読むのをやめようかと思ったぐらい。
ところが、途中からいつの間にかぐいぐい嵌まって行きまして、「おいおい、なんだよこれ、こんなファンタジー作品あるのかよ」と思いながら夢中で読み進めてしまいました。
どうもこの作者は天性のストーリーテラーなようです。それも、キャラに喋らせるセリフで繋ぐタイプではなく、地の文で読ませるタイプ。相当力がある作家さんだと思います。

最初の30ページほどを読んだ時点では思いもしませんでしたが、もう続きが読みたくて仕方ありません。
これはファンタジーの世界観を舞台にした、かなり重厚な「王朝ドラマ」です。
チャングム』とか好きな人は嵌まるんじゃないでしょうか。見たことないけどw

ひとつだけネックを挙げるとすれば、会話が続く箇所でキャラクターの描き分けが微妙なところ。
「誰が喋ってるの?」と分からなくなるところが結構ありました。
しかし、普通は会話でストーリーを引っ張る方が楽なのであって、会話の部分がそうなのに地の文だけでこれだけ読ませると言うのは本当にすごい。

いずれにせよ、素晴らしいものを読みました。
現段階で今年のベストに近いです。『オービタル・クラウド』と迷いますね。
これは読めて良かった。この作者と出会えて良かった。この人の旧作まで含めて平積みにしていてくれた三軒茶屋TSUTAYAに感謝です(笑)。

それにしても、まだ25歳とは…。
なんとも末恐ろしい。

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