【感想】『聖の青春』 大崎善生
★★★★☆
素晴らしかったです。
もちろん僕が将棋ファンであるという前提がありますので、そうでない方がどれぐらい楽しめるものかは分かりません。
小説ではなくノンフィクションルポですし。
でも、それでもこれは素晴らしいと言い切りたい。そんな本でした。
村山聖と言う人間がどれほど将棋と向き合って真摯に生きたか、と言うことが分かります。
そこには、「早逝の天才棋士」とか「東の羽生に対して西の村山」とか言うような大仰な呼称は必要なく、ただただ命のほとんどすべてを将棋に注ぎ込んで生きた一人の人間がいるのみです。
そう言う意味では、『将棋の子』で取り上げられていたような、プロにすらなれずに舞台を下ろされた多くの元奨励会員たちと同じ。
生き方と言う意味で、そこには何の違いもないのですね。
そしてこの本は、決して村山聖の天才性を謳うものではなく、彼の生きざまを伝えるものだから。
自分がこれまでは「天才性」への興味本位で彼を見ていたことがよく分かりました。
そこは重要ではないのですね。本当にそう思わされた一冊です。