【感想】『スティグマータ』 近藤史恵
★★★☆☆
結局読んだのはツール・ド・フランスが終わってからになってしまいましたが、まあ終わった直後だったので良しとします(笑)
今回はドーピング発覚で過去の勝利歴がすべて取消となった名選手の数年ぶりの復帰、という話題を中心に物語が展開されます。
この名選手は、ロードレース好きならもう明らかにあの人がモデルですよね、と分かりますが、物語は当然ながらフィクションですので。
ただ、あの人のドーピングが発覚して処分が決まった時の、ファンや選手たちの感情はこういうものだったのだろうな…という点ではとてもリアルです。
近藤さんのこのシリーズは、自転車の爽快感で上手くカバーされているのですが題材はいつも結構重たくて、今回も相当です。
特に今回は明らかに実在の元選手がモデルになっているであろうと思わせるキャラが出て来るだけに、その重さはひとしお。
フィクションとは分かっていても、そのキャラの言動に「あの人はそんな人じゃない」とか、「実はそうだったのかもしれない」とかついつい顔をイメージしながら考えてしまって、自転車ファンであればあるほど重たく感じるのかもしれません。
そういう意味で、ちょっとつらい一冊でした。